骨董の鏡 2010年9月12日 at 8:49 AM

ある年代物の鏡、それも金属で出来ている映りの悪い薄汚れた鏡がとある骨董品屋の店主が出してきた。

「実は盗品らしいのですが・・・・」そう言って、その鏡が店主の手に渡った経緯を語りだした。

知り合いにいつも儲け話や骨董を持ってくる、相内という名の男がいて、彼がある日また店主の所にやって来てこう言った。

「すぐに金を工面しなければならなくなった、どうかこれを買い取ってくれないか?10万でいいから!頼む!」そういうと古い鏡を出して、店主に見せてきたという。

鏡はかなり良い品で骨董としても価値があり、10万円という値は当時の金銭的価値からしても格安だった。どうしてこんな物をお前が持っているのかと尋ねると、「詳しくは聞かないでくれ、何も言わずに買ってくれ!」の一点張り

盗品であることは直感として分かったという。盗品であったとしても店主にとっては悪い話ではないし、警察に挙げられても知らなかったと言えばそれで済む、そう自分に言い聞かせて鏡を相内から買った。

そして相内が行方不明になっているという話を聞いたのは鏡を買ってすぐのことである。そして相内が神社の御神体盗みや墓荒らしのグループに加わっていたことも合わせて知った。

そしてとある村で御神体が盗まれ騒ぎになった事知った。その村で盗まれた御神体が、相内が持ってきた鏡であるかどうかは店主には分からない。

ただ今鏡の処理に困っているという。店主は一度は御神体が盗まれた村に問い合わせ、鏡が盗まれたものかを確かめようかと思ったが、それはしていないという。しようと思ったけど怖くて出来なくなった。

例の村で地すべりが起きて大変な被害が出たためだ。祟り、もしくは御神体を失った神社に村を守る力がなくなったために地すべりがおきたのではないか?そう考えてしまい、盗品かどうかの真相を知るのが怖いという。

相内も以前、行方不明。店主は今は精神を病んで店をたたんでいる。店をたたむ際、骨董を扱う別の業者に鏡は流れていった。


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